自炊へのアドバイスをする資格などないけど、思うこと

私も[料理]カテゴリーを設けているので一応10年前の自分に教えたい料理の始めかたに言及。
簡単にいえば、そこにはそれほど唸るような事が書いてあるわけでもない。この内容でなぜこんなに人気を集めたのだろうと思ったのだが、よくよく見ればブクマコメントもほとんど無く、とりあえずブクマという人が多そうだ。
私もとりあえずならば、このなかで私が首肯できるのは、「計量カップを買え」くらいかもしれない。むしろここに書かれていることを基本的な実践項目として、どれほど自炊が続くものなのか、と最初は思えた。
ちょっと以下に自炊にあたっての考えを項目を分けて書いてみる。整理して書くことでクリアーになる面があるかもしれないからだ。

・必要ないと思う人は自炊など考えるな

昔から共働きの人のために30分で作る晩御飯みたいな類の料理本もあって、工夫をすれば料理にかける時間などそれほどかからないように思う人もいるかもしれないが、たとえ調理自体にかかる時間が5分10分だろうと、まず間違いなく初心者の場合、スーパーにいって材料を選び、保存するものと使うものを分け冷蔵庫や棚に整理をし、調理器具を準備し、野菜を洗って切り、肉類の下ごしらえをするだけで一時間以上ははかかると考えたほうが良い。充分な時間が取れない人は休日だけ料理をしてみて、自分の生活に合うものかどうか考えること。
私が自炊を始めたきっかけは自分の体の不調であって(たんぱく質をとる必要があった)、何食っても健康にだけは自信があるというような人は、自分の貴重な時間を削ってまでして自炊などする事は勧められない。企業人の人で忙しい人なんかは、寝る時間を除くと家にいる時間は2時間以内という人も多いだろう。そういう時間は本を読むもよしゲームでも音楽でもいい。なんかの楽しみに充てたほうがいいんじゃないか。この世にはもうすでに一生かかってもクリアできないくらいのゲームや一生かかっても読みきれないだけの本が存在しているのだ。ヘタな料理などして時間を無駄にしたおかげで、貴重なそれらとの出会いを犠牲にしているかもしれないのだ。

・節約を目標にしろ

自炊にはモチベーションが大事だと思う。とりあえず健康であるなら、節約以外モチベーションなどあるだろうか。料理できる人になりたい? 惣菜も弁当も買えないような所で暮らすとでもいうのだろうか。惣菜も買えないところでは、材料すら買えないだろう。料理できる人となってちょっとした尊敬を? 料理なんてちょっと居酒屋でバイトでもした経験があるならそこそこ出来てしまうし、男性でもそこそこなら昨今は腐るほどいる。第三者はあなたが料理のできる人ときいてその場ではちょっとした尊敬をするかもしれないが、間もなくそんな些事など忘れる。
いやむしろあなたが男性ならば、料理が出来ると聞いた時、凝り性なのではなんて思われるかもしれない。少なくとも私が女性だったら、お好み焼きとかチャーハンみたいな有り合わせで作るような趣旨の食べ物のの作り方でアレコレ言うような男性は、まず敬遠する。
話をもどすが、初心者はたいてい何度か失敗するものと考えるならば、出来合いの惣菜よりも高いコストをかけてわざわざ出来合いの惣菜よりもマズいものを作ってしまったときの心理的ダメージはキツイものがあるだろう、と思う。あまり美味しくない結果でも、コストが掛かっていないと思えばこそまあ許せるじゃないとなるわけで、次は上手く作ろうと言うモチベーションが湧くのである。次もわざわざお惣菜よりも高いお金をかけておいしいものが作れなかったら、などという不安の事を考えれば、コスト無視の自炊など果たして続くかどうか。
むろん綿密なコスト計算をすれば自炊のコストはそう劇的に安いものではないかもしれない。だが、予め作るものを決めてからスーパーに行くなんて不経済より、スーパーに行ってからそのときに安く売ってる食材を用いてメニューを考えるとか、根野菜は特売日に買いだめするとかしてコスト意識を高め、惣菜買うよりずっと得なことをしている、という意識を保て、という事である。自分が作ったペペロンチーノが100円もしないと考えれば、700円の外食に対して600円も儲かるのだ、と。
これこそモチベーションなり。

料理本は「なぜ」を説明してくれるもので写真入りを買え

まず重要なのは、調理過程の写真があるかどうかであり、べつに10代の女性向の雑誌の文章やデザインに恥ずかしさを覚えながら無理にそんなものを読まなくとも、写真入りの初心者向けの落ち着いた内容の本はいくらでもある。男性向けだって、酒の肴中心じゃない料理一般についてのものもあるはず。
また同じ写真入りでも、このタイミングでなぜ砂糖を入れるのか、なぜみりんは後から入れても構わないのかなど、味付けや切り方などを合理的に説明してくれる本がそこそこある。応用が効くと言う点で非常に役に立つ。ただレシピしかないようなものは、うまく作れたとしても、よほど解釈力がないとただ他人の手のひらで踊っているだけで、つまらないし、発展性がない。モチベーションが続くかどうか不安である。例えばどんな習い事でも、ただ真似をしろ、といわれてするよりも、この動作にはこういう意味があるからするのだ、と説明を受けてするのとではモチベーションという意味で随分違う。ときに、有名評論家ものでレシピしかないようなもので、訳もわからずそのとおり作ってみたものの味が合わなかったような場合、ただ味が合わないだけなのに、ヘタしたら自分が悪いんじゃないかと思ってしまうこともあるかもしれない。だから合理性も重要なのである。
ただし、そういう内容の本でも、よほどカネが余っていないかぎり、文章のみしかないような本は初心者は買うべきではない。文章のみの本は内容が詳細かもしれず、男性の場合などつい本格的にやりたくなってそういう本を買ってしまうかもしれないが、研究書とは話が違う。初心者が文章によるイメージだけで料理してうまく行くものではない。写真入でしかも合理的な説明がなされている本もあるはずなので、じっくり探して欲しい。
あとついでに、よくある裏ワザ本なんかもあると応用が効くケースがけっこうある。

・冷蔵庫はほどほどのモノを

冷蔵庫は大きいものを、というのは良いアドバイスとは思えない。今現在の家族数を考えて決めるべきで、将来子供が生まれるからなどと300リットル以上のものを共働き夫婦が買うべきとも思えない。子供が生まれてから買い換えればいいのだ。今、3、4万のものを買っておいて将来買い換えるのは、経済的な負担はそう重たいものでもないだろう。2人暮らしならば、150〜200Lで充分だと思う。
なぜ必要以上に大きい冷蔵庫がダメなのか。へんな買いだめをしてしまいがちになるからである。ヘタにスペースがあると冷蔵庫に無造作に買ったものを入れがちになり、で挙句の果てに腐らせたり、そこまで行かなくても鮮度を落として、腐る前になんとかせねばと、作りたくない料理までテーブルに加えることになりかねない。せっかく自炊をはじめて節約しようとしているのに、余計な料理を加えねばならないとは本末転倒だ。
今スーパーにいくと、ほとんどのものが4人前標準で売られている。1人2人暮らしでは、材料がとにかく余る。その余ったものをどう調理するかが先決で、新しい材料に目が行かないためにも、冷蔵庫に余分なスペースは必要ないのである。余ったものは1週間も保存できるわけではないから、同じ材料を翌日すぐ使うのはためらわれるにしても、翌々日には鮮度の問題からして使ったほうが良いだろう。そうすると買ったものと保存してあるもので、夏場で2交代、冬場で3交代で消化させてゆくから150Lのスペースで充分なのだ。(ビールとか大量に冷やす人は別)

・手順をまず考える

料理の最中に調理に使った器具を洗うことができれば、これほど楽な事はないのでこれは私も賛成。ただしそれが初めての料理の場合など、気をつけないといけない。無理してあれもこれもやろうとすると失敗する。まず手順を考える。たいていのレシピ本には、調理器具を洗うタイミングのことなど書いていないから、頭を使わなくてはならない。で、途中で手順どおり行かなくなったら、料理の出来具合にまず集中し、洗い物など後回しにしていいと思う。ヘタに両方やろうとしてリズムが崩れると、洗い物までどこまでやったか忘れてしまい二度手間にだってなりかねないのだ。初心者はまず料理に集中。洗うときは洗い物に集中。これでかえって時間的ロスがすくなくなる場合もけっこうあると思う。

・ドレッシングは考え方次第

節約絶対ならドレッシングは手作りに限る。節約はほどほど、化学調味料にも神経質でない人は市販品でいい。ある程度手間とカネをかけずに市販品と同じような味を出すのは、素人には、なかんずく初心者にはまず不可能と思ったほうがいい。分量だって小人数分の極少量のドレッシングをその都度作るのは疲れるし、生野菜など最初はどれほどのドレッシングが必要かなんて見当はなかなかつかないはずで、へたすると作りすぎになる。無理はしないこと。

・塩にはお金をかけること。

実はこれが一番言いたかったことかもしれない。
節約のために、牛肉のかわりに豚肉、あるいは豚肉のかわりに鶏肉、モモのかわりにムネとか材料をレベルダウンしても、そこそこ食えるものができる。例えば私は唐揚など、ムネ肉しか使ったことがない。酒につけておけばほとんどパサつかない。
ただし塩だけは高いものとそうでないものとではぜんぜん違う。塩はあらゆるものに使う基本調味料で、ほぼここで決まると考えていい、と思う。また、例えばゲランドの塩なんかは多少振りすぎても、それほどキツくならなかったりする。量を誤った場合のリカバリーの手間など考えると、これは便利さの追求でもあるのだ。
塩、そして味噌、欲をいえば醤油。これらには値段をかけること。これらに比べれば、バターとかソースとかオイルとか粉とか酒、砂糖、みりんなどは標準品でいい。


以上、とりあえず好きに書いてみた。きっかけを与えてくれたgood2nd氏に感謝。