『ズボラ人間の料理術 レシピ集』奥薗壽子

ズボラ人間シリーズのうちの一冊をを図書館で借りて読んだ。

ズボラ人間の料理術 レシピ集

ズボラ人間の料理術 レシピ集

なかなか面白い本である。ちなみに著者はTVチャンピオンの3分料理王みたいな部門で優勝歴があるらしい。


ただし、楽をしたいという目的のためだけにこの本を買っても、役に立たないかもしれない。楽ということであれば、例えばダシの素を使えば、味噌汁なんてそれこそ3分でできるのだが、この本の趣旨はそういう事ではないようだ。
楽第一ではない。味や健康のことを考えないアイデアは、即ボツである。このへんについては、冒頭で基本的な考え方として述べられ、また、ひとつひとつのレシピについて生まれた経緯がエッセイ風に綴られ、どういう考えに基いているかが分かるようになっている。
載っているレシピで、これは食いたいとは思わないな、というのも正直あったが、このエッセイにより著者への信頼と親近感を自然と抱くであろう読者は、不満は抱かないだろう。 


細かくいうと、どういうふうにしてその食材を簡単に食してしまうか、よりは、一見手間のかかる料理をなんとか他の簡単な方法を使って近づけないか、というレシピが多い。それに対して、ちょっとまがい物的に感じてしまう人がいるかもしれない。こんにゃくスパゲティみたいなものはどうしてもホンモノは超えられないみたいな。
著者の編み出した方法をそのままなぞるだけでなく、その方法をどう自分の方法にできるか、転用流用ができるか、こそが楽しみなのではないかと思えば、それはたいした問題ではないだろう。
料理本は基本的にはヒントなのだと思う。そもそも本に書かれたものと実際の台所で、食材も調味料も火力も鍋の質も完全に同じではなく微妙に違うのだから、同じ分量を守ったところでその通りの味になるわけがないのだ。そこに書かれたものに少しでも近づくことで、自分の味への感覚を磨き、自分の料理にしていくところに意義があるのだ。
というわけで、レシピに書かれている方法をそのままなぞるだけではどこか物足りず、いつも自分なりの食材とか調味料を加えてしまう工夫大好きの私のような人にとっては、ジャストとは言わなくてもフィットする本であった。